集光


早くから、太陽が地上へと顔を出し、
ゆっくりと時間をかけて、空の真ん中へと登り、
同じ様に時間をかけて、海へと沈んでいく。

8月も後半にはいると、少しずつ太陽の出ている時間が短くなっていった。

夕方に帰ってきた将を再び見送ると、
は台所に入り、夕御飯の支度をし始めた。

「えっと・・・次は・・・・・・」

記憶をたどり、ゆっくりと手を動かしてゆく。

ミンチを油で炒め、塩コショウを振り、
ケチャップとトマトジュースを入れ、
最初は強火で煮込み、その後は弱火で煮込む。
その後、バターを入れる。

出来上がれば、ゴハンに混ぜなじませる。

「コレで大丈夫だよね?」

道具が動く音が響くキッチンでの声が零れる。

出来上がったゴハンの様子を見ながら、
少し深めな皿にバターを塗る。

もう少ししたら帰ってるかなぁ・・・・

水で出を洗い、タオルで手を拭きながら、
時計へと視線向ければ、8時を刺そうとしていた。

持っていたタオルを置き、
用意をしたゴハンの上に乗せるホワイトーソースを作り出す。

牛乳にシチューの粉を混ぜ、中火で粉を溶かしてゆく。

少しとろみが付き始めたら、味身をし、
味を調えていく。

こんな感じだったかなぁ?

去年の秋に食べた味を思い出す。

誕生日のお礼にと、九州の家のお隣ですんでいる、
1つ年上の一先輩。

東京へ来てから、電話で話しているものの、
顔を見て話をしていないの為、中々話が続かない。

選抜の練習とクラブの練習が忙しいから疲れてるのかなぁ・・・
もともと、お話し上手じゃない人だしね・・・

苦笑しながら、ソースをかき混ぜる。

程好くとろみが付いたソースをゴハンの上に乗せ、
チーズを載せ、オーブンを温める。

オーブンの回る音の中、来客の知らせるチャイムがなり、
小走りで駆け寄り、対応をする。

「あの、僕だけど」

「お帰りなさい!
 今、開けるね」

パタパタとスリッパの音を鳴らし、玄関へ駆け寄り、
勢い良く玄関のドアを開け、

「お帰りなさい!!」

「ただいま」

微笑みながら再び、同じ言葉で返せば、
テレながら微笑み返し、室内へと入って行く。

「今日の夕御飯ね、ドリアにしたんだけど良かった?」

「うん。
 教えて貰ったヤツ?」

「一先輩みたいに上手く出来てるかどうか解らないけど、
 頑張ってみました!」

隣に並びながらキッチンへと入り、
は完成まで後1歩のドリアをオーブンへと入れ、
流しでは将が手を洗い、冷蔵庫から野菜を取り出し、
サラダを作り出す。

「スープなんだけど、どうしようか?」

オーブンから目を離し、野菜を切っている将へ言葉をかれば、

「そうだね・・・・」

今思い出した様に表情を作り、動かしていた手を止めた。

「熱い物に熱いスープはヘンだよね?」

手伝う為、数歩歩き将の横に立つと苦笑をするが、

「う〜ん・・
 僕は気にしないけど・・」

の苦笑に釣られる様に、苦笑で返す。

「お・・オニオンスープなんてダメかなぁ?」

恐る恐る言葉を作り、上目で問えば

「いいよ」

微笑み、頷き返せば困惑していた表情が微笑みに変わり

「大急ぎで作るからね!
 待っててね」

パタパタとスリッパの音を鳴らし、
冷蔵庫からタマネギを取り出し、将の隣に立ち
音楽のリズムの様にタメネギをスライスする。

「スープも教えて貰ったの?」

「お母さんに教えて貰ったの」

「母さんに?」

「うん」

お鍋に水を入れ、コンロに掛け沸騰すれば、
コンソメを2つ入れ、玉ねぎを入れて塩コショウで味を調える。

会話をしていれば、出来上がりを知らせるタイマーが鳴り、
オーブンから、テーブルへと運ばれ、出来上がったスープも運び、
向かい合う様に座れば、食事が始まる。

「明日から合宿だね。
 将は準備できてる?」

湯気の立つ、スープをかき混ぜながら聞けば、

「これからかな・・
 ちゃんは出来た?」

ドリアを食べていた手を止め、微笑み言葉を返す。

「大体は出来たよ。
 後、パジャマを入れれば完成」

クーラーの効いた部屋に、湯気の立つ夕食。
適度に冷ましながら食べるドリアとスープを食べながらの雑談。

今日1日、何をしていたか。

桜上水でクラブだった将

部屋で選抜メンバーから借りた小説を読んでいた

毎日、似た毎日を過していて、
話をして同じ言葉が出てきても、
毎日が新鮮で笑いながら話しが出来る。

大切な時がゆっくりと流れる。

食事を終えても、テーブルから離れる事無く話が進む。

話が少しだけ途切れ、気が付けば、

「もう、こんな時間なんだ・・・」

長針が10時へと近づいていた。

「大変、お風呂入れなきゃ!」

座っていたイスから勢い良く立ち上がり、
パタパタとスリッパを鳴らし風呂場へと駆け込んでゆくを見送り、
夕食で使っていた食器を流しへと持って行き洗い始める。

「ありがとう、将。
 後は私がやるから、明日の準備をやってきて」

泡の付いた食器を取り、水で泡を流していた将に声をかけ、
タオルを手に横に立てば

「大丈夫だから、
 ちゃんは先にお風呂に入ってきて」

動かす手を止めず、首だけ動かすが、

「ダメ!将はお風呂に入って、荷造りをして、
 明日からの合宿に備える為に早く寝るの」

微笑みながら洗っている皿を奪い取り、
場所を横から押し出だせば、

「ありがとう」

申し訳無さそうに礼を言い、キッチンを出て行く。

気にしなくても良いのに・・・

口の中で消えていく言葉にため息を付く。

洗い終わった皿を拭き食器棚へと戻し、
テーブル拭く。

アレもやったし、コレもやったし・・・・

キッチンの色々な所を指差し、掃除の忘れが無いかチェックをする。

良し!

腰に手をあて、空いた手でガッツポーズをし、
片付けたばかりのイスを引き腰を下ろす。

なんだか・・・
なんて、言うのか・・・小姑みたいな気が・・・・するような・・・
しないようなぁ?

ダレもいないキッチンを眺め、
フッと思った事を声に出しかけるが、

将は全部やってるんだよね・・・
サッカーと家の事を両立してるんだよね・・・・・

やっぱりコッチに・・・

目を閉じ、真っ暗な中で考え付く答えは
何度考え直しても同じ答えになり、首を振り、出た答えをかき消す。

違う、私は・・・・

ちゃん?」

肩に厚手のタオルをかけ、髪から滴る水滴を受け取ってり
不思議そうな表情でキッチンと廊下の所で立っていた。

「どうかしたの?ちゃん?」

問いかけに反応が無かったからか、
首をかしげ、キッチンへと入ろうとするが、

「将、明日からの功兄のゴハンどうしよう?」

何時に無く低い声で告げられた言葉に動きを止め、
驚きの表情を作り上げ、

・・ちゃん?」

真剣に問われた言葉に戸惑い名を呼ぶと

「明日から私達合宿に行くじゃない!
 となると、功兄は1人でゴハンを作る事になるんだよ!?
 何か作って冷凍するべきだよね。
 どうしよう・・・何が良いんだろう・・・・・」

勢い良く作り上げられる言葉に、戸惑い、
真剣に悩み出してしまったに言葉をかけようとするが

「功兄がゴハン作っているなんて想像出来ないよ・・・」

両手で頭を抱え、本気で頭を抱え込んだ。

「どぉ〜しよう・・・」

今にも泣き出しそうな声に苦笑しながら、
数時間まで自分が座っていたイスに腰を下ろし、
机に伏せているの顔を覗きこみ

「大丈夫だよ。功兄はちゃんと料理出来るし、
 1人でも大丈夫だから。ね!」

微笑みながら、小さな子供に言い聞かせるように言葉を作る。

「食事も洗濯も掃除も僕以上に上手だよ」

「そうなの?」

うっすらと潤んだ目を瞬きし、机に伏せていた顔を上げ将を見ると頷き、

「本当だよ。
 ちゃんが東京に来てからは手料理が嬉しくって、
 まかせっきりにしちゃってたんだけどね」

功兄のチャーハンは美味しいんだよ。

「私、食べた事無いよ・・・
 将だけセコイよ・・・・功兄のばかぁ〜」

上げていた顔を、コッンと机にぶつけ

小さな声で何かを呟いていたが、
勢い良く立ち上がり

「将!
 私、お風呂入ってくる。
 将は明日の準備して早く寝てね!」

バタバタと乱暴にスリッパを鳴らしお風呂場へと走って行った。

「功兄のばかぁぁあぁぁぁ!!」

お風呂場から、叫び声が聞こえ将は苦笑するしかなかった。

色々な事がありながら、布団の中へ入り1日が終われば
新しい1日が始まる。

「おはよう!」

部屋のトビラを開け、挨拶をすれば

「おはよう、ちゃん」

「おはよう、

笑顔で返してもらえる。

「あ、功兄。
 昨日の夕御飯のドリアあるから食べてね」

「そうか、それは楽しみだな」

「お鍋にはオニオンスープがあるか」

「ありがとうな」

笑顔で微笑みながらの会話に、
キッチンから出てきた将は両手に持っていた茶碗を置き、

「功兄、ちゃん、朝ご飯できたよ」

「ありがとう、将」

「ありがとな、将」

微笑み合って兄と妹が同じタイミングで
振り向き、礼を言う。

兄弟なんだなぁ〜

心の中で苦笑し、テーブルに着く姿を見送り、
2人が席に付けば、自分も付き朝食の時間が始まる。

「功兄、今日から合宿に行くから、帰りは明日の夕方になるから
 ゴハンは自分で作ってね」

炊き立ての白米を食べながら、おかずの玉子焼きを箸で挟む。

「1泊2日の合宿だったよな」

「うん。
 武蔵森だけどね」

確かめの言葉に、頷く言葉。

「頑張って行って来いよ」

「うん」

美味しく食べ、兄2人の会話を聞いていた
視線を感じ箸を止め、首を傾げる

「どうしたの、功兄?」

も合宿に行くんだよな?」

「行くよ」

箸を置き、問いかけに頷く。

「1泊泊まるんだよな」

段々、低くなる声に素直に、

「そうだよ」

頷けば、

「男子ばかりの部屋に、一緒に寝泊りをするのか?」

「う〜ん・・
 西園寺監督と一緒の部屋だと思うけど・・・」

「本当にか?」

低くなる声と座りだす目

「た・・・たぶん・・・・」

話を詳しく聞いていないので、頷く事が出来ないでいれば

は合宿から帰ってきたら九州へ帰るんだぞ!
 オレは・・・・仕事、仕事でオレはと全然遊んでいない。 
 夜ぐらい帰ってこないか?」

「功兄・・・解った。
 帰れる様に頼んでみる」

「そうか!」

嬉しげに微笑む顔に、
止めていた箸を動かし、朝食を追え

大きめなバックを肩にかけ

「行ってきます!」

外まで見送ってくれた兄に手を振り、並んで歩き出した。